この話は「裏」要素にがあります。
18歳未満の方、意味を解さない方、嫌悪される方はお戻りください。
閲覧は自己責任でお願いします。読んだ後の苦情は受けかねます。





















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「お姉ちゃん……。
 今まで守ってくれて、ありがとう」
 彼女の平穏が、幕を閉じる。



深海魚


 渡されたデータに、アルヴィス戦術指揮官皆城総士は溜息をついた。
 電子書類に記載されているのは、遠見真矢の、本来のシナジェティック・コード形成数値。
 現パイロットの中で群を抜く一騎に次ぐ、恐るべき数値の高さだ。
 それが意味するところを正確に分かるからこそ、このデータが忌々しい。
 島を守る者として遠見弓子の行為は許せないものだが、一人の人間として彼女の行為に感謝する。

 偽のデータは、確かに彼女を守っていた。
 総士のかけがえのない存在を。


 コンピュータで扱われている文字特有の、平淡な均一さがこの時ばかりは好ましい。
 総士の中に渦巻く感情を、冷たく撥ねつける。
 これは、冷たい現実そのもの。
 島の子供達の、誰一人として逃れられぬ運命。
 例外は許されない。

 しばし微動だにしなかった総士は、やおら腕を振り上げ、電子書類を床に叩き付けた。
 耳に優しくない派手な音がして、機械のモニターや部品が飛び散る。
 なぜ遠見弓子がデータ偽造などという愚かな事をしたのか、皮肉にも、今理解した。


 一騎に頼まれ、そして自分の望みがそれに沿っていた為、真矢をパイロットから外そうと動いた数日。
 上手くいくとは思っていなかったが、これだけはどうか、と願っていたものは、島の情況と彼女自身の拒否からやはり上手くいく事はなく、遠見真矢は初訓練の日を迎えた。
「パイロットのフィジカル・チェックを」
 遠見千鶴の淡々とした声が、シミュレート管理室に木霊する。
 大人とは見事なもので、どれほど己の意に添わぬ事が目の前で起こっていても、表面上は綺麗に隠す事も出来るのだ。
 同年代の仲間達に比べれば表情を取り繕うのが上手い総士も、今日ばかりは顔の強張りを取る事が出来ない。
 このシミュレート訓練の結果如何で、彼女のパイロットとしての今後が決まる。
「エア・シックレスの兆候、ありません。
 …………遠見先輩、すごい……」
 ジークフリード・システムを扱い、日々膨大な情報量と接している総士にとって、この部屋の数値全てを理解するのは造作もない事。
 無邪気な西尾里奈の呟きが、癇に障る。
 目を見張るような突出した数字は、少ないだろう。
 だが、全てにおいて平均以上の数値に加えて、何よりもパイロットの落ち着き払った精神状態。
 既にパイロットである仲間達でさえ、ファフナーに搭乗する際は性格に変調が見られたというのに、彼女の平静さは頼もしくさえある。

 だからこそ、危険なのだ。

 常に戦力を欲するのは、この世界状況下では当然の事。
 竜宮島とて例外では無く、即戦力になると見なされれば、待つのは戦場だ。
 ――乙姫にえこひいきと言われようがなんだろうが、総士は不自然に思われないギリギリの範囲で、真矢をそこから遠ざけようとする。
 それが自身の望みであり、親友の頼みだった。

 無駄な事だと、島のコアを守る存在として、総士が誰よりも分かってはいたけれど。
 何かせずにはいられなかった。

 果たして、遠見真矢は即戦力になれるとの判定が下され、ファフナー・パイロットを統括する総士にも、その意向が伝えられた。
 真っ先に彼に教えられたのは、戦術指揮という立場上、今後のフォーメーション変更や位置の決定などに影響してくるからだろう。
 シミュレーション結果から割り出される予測、大人達の意見、膨大なデータ――それらが、情け容赦なく総士に現実を突きつけてくる。
 どうする事も出来ない現状。自分の無力さ。

 恋人の、死地への赴き。

 息を吐く度に、身体の奥にあるものをひとつずつ出していっているような気がするのに、胸のあたりの重さは消えない。

 そういえば、近頃は真矢とプライベートで……"恋人"として、会う時間が全くなかった事に気付く。
 彼女の適正が判明してからというもの、検査やらなんやらで真矢は忙しく、総士も彼女のパイロットにさせないよう動いていたせいで衝突も多かった。
 気付いてしまえば、むくむくと会いたくなるのが人情というもの。
 総士は深く考える前に真矢の勤務スケジュールを検索し、自身の仕事と照らし合わせて、彼女に会いに行く算段を整えていた。


 見慣れているはずの、パイロット達が着るシナジェティック・スーツ。
 これまで、誰のを見ても何も思わなかったというのに、来ているのが真矢だというだけで、総士は露わになっている肌の部分に目がいくのを止められない。
「遠見」
 廊下で、下の名前を呼ばなかったのはせめてものけじめだ。
 ここはアルヴィス。仕事をする場所である。
「皆城くん」
 ゆっくり振り返りながら、甘い声で真矢が呼んでくる。
 少しだけ顔が硬いのは、公人としての総士と衝突する事が多いのを知っていて、警戒しているのかもしれない。
「少し良いか? 今後の戦闘フォーメーションについて、いくつか話したい事がある」
「うん、分かった」
 真矢がパイロットになる事を反対し続けている総士の持ちかけに、一瞬怪訝な表情をした少女だったが、すぐに快く頷いた。

 訓練を終了し、後は帰るだけという真矢は、着替えたら億劫になるから、と薄いスーツのまま総士に話す事を促した。
 さすがに廊下で話せる内容ではないので、手近な部屋に入る。
 そこはどうやら仮眠室らしく、室内には小さなデスクとベッドがあった。
「座ると良い。訓練の後だろう?」
「ありがと。そうさせてもらうね」
 やはり慣れぬ訓練続きで疲れているのか、真矢は総士の勧めに素直に従ってベッドに腰を下ろした。
 色っぽく落とされる吐息。
 軽く振られた頭に、髪が倣ってふわふわと動く。
「それで、なあに?」
 彼女がベッドから見上げる事によって、その白い首がよりくっきりと見えて、総士は持っていた電子書類をデスクに放り捨てた。
 ここがどこであるか、なぜ真矢に会いに来たか、そんな事は遥か彼方に飛んだ。

 驚きに目を丸くする少女に動く隙を与えず、総士は真矢に口付けた。
 久しぶりの、柔らかでクセになる感触。甘い味。
 動かない彼女の身体を、痛くない程度の勢いでベッドに押し倒す。
 この部屋に入ったのは偶然だったが、結果的にベストな選択になった。
「ちょ……、皆し……く……んんっ」
 ようやく事態に気付いて抵抗し出す真矢の手足をあっさり封じ込め、少年はこの世で最高の甘露を味わう。
 ファフナーとの一体化をスムーズに行う為のスーツは、防御性を求めてはいないせいか非常に薄くて、また、これ一枚しか身につける事が出来ないものだ。その上、肩や太腿の部分は肌が剥き出しになっている。
 脱がせる方にしてみれば、これほど侵入が容易いものは無い。
 押し戻そうとする舌を逆に絡めて楽しみつつ、総士は真矢のスーツに手をかける。彼自身は着用する事は無いが、構造は良く知っているので苦労は無い。
 隠しファスナーに少年の手がかかり、下ろされようとしたその時、真矢が総士の唇から逃れて、相手を睨みつけた。
「やめて! 一体なんなの急に……こんなの嫌……」
 じわりと、少女のまなじりに浮かぶ涙。
 呼吸が苦しかったのか紅潮した顔で言われても、今の総士を止める事は出来ない。
「真矢……」
 熱そのもののような囁きに、名を呼ばれた少女は感電したかのごとく顔を逸らす。
 その事によって、スーツに覆われていないわずかな首筋を見つけて、総士は誘われるまま噛み付いた。
「いたっ……やだ、総士くん!」
 与えられた痛みに、彼の尋常ではない空気を察したらしい。真矢が怯え混じりの声を上げる。
 見える場所にキスマークをつけない、という約束事などあっさり破って、色濃い痕を付けた総士は、今度こそシナジェティック・スーツのチャックを下ろしていった。

 ファフナーに乗る、その為だけの服。
 戦装束とも言えるスーツは、彼女に似合っていて、腹立たしい。
 彼女が戦う必要は無い。
 以前口にした言葉は、今も総士の中にある。


 どうにか止めさせようと、身体を押したり、髪を引っ張ったりする手を片手で纏めて、少年は身体をずらしていく。
 半分ぐらい開け放したファスナーから、発展途上の柔らかな膨らみを見つけて、その頂きに実る果実を齧ると、華奢な体が跳ねた。
「やっ! そこ……いやあ……っ」
「嘘つきだな。ここが良いんだろう?」
 彼女の弱いところ――感じるところは、知り尽くしている。
 そのひとつ、立ち上がりかけた小さな果実を口に含み、吸い、舌で転がし、吸い上げて楽しむ。
「んん……っ……」
 口では拒否を示しながら、びくびくと反応する肌が受容している快感を教えてくれる。相変わらず敏感な少女に、総士は唇の端を上げた。
 まだ手を付けていない方の胸に唇を移して、彼女の腕を捕らえていない手で、シナジェティック・スーツが覆っていない脇腹を撫でる。
 服を着ているのに、触る事が出来る滑らかな肌。
 生まれたままの姿の真矢はそれは美しいけれど、こうした中途半端な露出もクるものがあるな、と、どこか頭の片隅で少年は思った。
 太腿の布のない部分から手を差し入れ、下腹部を焦らすように撫でる。
 胸への刺激で手一杯な真矢は、追加された責めに身を捩じらせた。
「だめっ……やめてぇ!」
「まだそんな事を……」
 呆れたような溜息をついた総士は、刹那、酷薄な笑みを浮かべ、食んでいた果実を強めに噛んだ。
「いっ!!」
 痛みと快楽に、暴れていた少女の体が反り返る。
 まるで楽器のように顕著な反応に満足して、少年は今度は労わるように、含んでいたそれを舐めた。

 スーツを着せたまま、そのスーツが空いている部分に点々と赤い痕を残して、総士は真矢を一糸纏わぬ姿にする。
 執拗に快感を刻まれる間中抵抗して、体力を消耗した少女は、身体を動かすのも億劫らしく、脱がされるのを止める事が出来なかった。
「総士……く、な、んで……?」
 胸を激しく上下させて訊ねてくる真矢を見て、心が痛まない総士ではない。
 嫌がる彼女を抱くより、お互いの合意の上でセックスした方が良いなんて、分かりきっている。
 それでも止まらないのは、いまだ収まらぬ動揺が、恐怖があるからだ。

 こんな細い身体の彼女が戦場に出る事に。

 自身も着ているものを脱ぎ捨てて、総士は、動けない真矢を強く強く抱き締める。
「…………だ」
「え……?」
 肩に顔を埋めて何事か呟いた彼に、真矢が聞き返す。隔てるものはない近さにいるのに、聞き取る事が出来ないほど、声は小さかった。
「嫌だ……君が、戦うなんて……!」
 総士が簡単に捕らえられてしまうような、女の子なのに。
 彼が、おかしくなるぐらい大切な子なのに。
「全て奪う……っ。フェストゥムが、島が……全てを奪っていく!」
 一騎も、甲洋も、翔子も、みな。
「……総士くん」
 はじめて、真矢の腕が総士の背に回される。
 いつもの情交の時のように。
「総士くん」
 明確にかけられる言葉はなかったが、受け入れる姿勢そのものの真矢の行為が、総士の荒んだ精神を落ち着かせる。
 色素の薄い彼の髪を撫でる真矢は、抑揚なく言った。
「――それでも、守りたいものがあるから、あたしは行くよ」
 少年の、彼女を抱く腕に力がこもる。
 どれだけ総士が、一騎が、願っても、祈っても、真矢は行ってしまうのだ。

 誰よりも強い意志で、己で選んで。


 総士の手が、明確な意思を持って、真矢の脇腹を滑った。
「ひゃっ」
 収まりかけていた熱が、そんな些細な刺激で温度を上げる。
 震える少女の肢体を、やや身を起こした総士の、諦念が浮かんだ双眸が見下ろした。
「……ならば、僕は」
 言葉を切り、総士は真矢の下腹部に唇を落とす。
「僕は僕のやり方で、君を守ろう」
 宣言は、かろうじて彼女に届いたのだろう、息を呑む気配がする。
 真矢の答え気を聞く事無く噛み付けば甘い吐息が落ちて、総士は休んでいた手を再開した。

 ぴちゃぴちゃと、猫がミルクを飲むような音が響く。
「あっ、あぁ……!!」
 水音と共に聞こえる、鼻にかかった高い声も総士の耳を刺激して、彼の責めはますます熱を帯びていく。
 彼の舌でほどかれていく真矢の秘所は、彼の唾液と彼女の流すもので濡れそぼり、暴かれるのを待っていた。
「やぁ……っ、おかしく、なるぅ…………」
 高め続けられる身体の熱に、真矢が音を上げる。  それを聞いた総士は真矢の花芯から顔を離し、隠すもののない柔らかな首元に噛み付いた。首から肩、腕、手、指――胸に腹部、太腿、膝、足の甲と、余すところなく、隅々まで口付ける。
 白い肌が赤く染まる度に真矢は甘い声をあげて、総士を昂ぶらせた。
「そ、し……くんっ、も……おね、がっ……」
「もう? 何がもう、なんだ?」
 意地悪く彼は聞き返す。
 拒否や制止の言葉を―本心ではないにしろ―口にする事の多い彼女が、唯一、自ら求めてくるこの瞬間が、総士はたまらなく好きだった。
「っ……!」
 問い返され、答えに詰まる真矢の秘所をゆっくり撫で上げる。
「あぁッ!」
 敏感な花の芽を軽く押しつぶして心地良い嬌声を引き出すも、彼女が達してしまう寸前で手を離す。
「はぁ……ん、そうし……くん」
 快楽の涙を零し、懇願の目で見上げてくる真矢に征服欲が満足していくのを感じながら、嗜虐芯はもっと、と凶暴さを増していく。
 いつもならこんなに追い詰めたりはしないけれど、今日は優しく出来ない。
 ヒクつく秘所の入り口に軽く指を沈めて、総士は恋人の耳元で囁いた。
「何が欲しい?」
 空いている左手で胸の頂をきゅっと摘めば、総士の下で跳ねる真矢の四肢。
 真矢の熱に浮かされた瞳が、助けを求めて男を見詰める。
 蠱惑的な微笑を浮かべる彼に誘われ、また容赦のなく責められて、少女はついに陥落した。
「総士くんが……欲しい」
 こくんと、恥じらいを逃がすかのように動いた喉が、総士の望むものを発する。
「ちょうだい……総士くんっ」
 待ちかねたように、彼は一気に彼女を貫いた。

「き、きゃあああああ!!!」
 限界ギリギリまで高められていた真矢が、その衝撃で頂点を極めてしまった。
「っ……」
 いきなりのきつい締め付けに総士は眉を寄せ、つられて果ててしまうのをどうにか堪えてその波をやり過ごす。
「ずるいだろう……っ、それは……」
 爆発しそうな自身をなだめ、腕の中で震える少女を見下ろす。
 自身の呼吸が整ったところで、いじめ過ぎて敏感になった彼女の様子を見ると彼は動き出した。
「ひっ……! い、や……ア、あああぁっ」
 一度果てた身体は、あまりに容易く再燃する。
 与えられる快楽の強さに真矢は悲鳴をあげ、恥じらいも忘れて総士に縋りつくしか出来ない。
「真矢…………真矢」
 思うままに彼女を鳴かす男は、切なげにその名を呼ぶ。
 真矢は極限まで追い落とされながらも奇跡的に呼びかけに気付き、答えるように総士の首に腕を回した。
「んんっ……」
 すかさず彼は彼女の唇を求め、上からも下からも淫らな音がする。
 肩の辺りをひっかく彼女の手を握ってベッドに押し付け、総士はペースを上げた。


 ――壊せれば良いと思う。
 壊して、動けなくして、総士しか入れぬ部屋に閉じ込めておければ良い。
 そうすれば彼女は自分だけしか見られず……出撃する事もない。

 だがそれは無理な事。
 どれだけ望んでも、決して叶わぬ夢。


「くっ……」
 自身を包む真矢の内部の変化に総士は呻き、少女はびくりと身を反らす。締め付けてくる心地良い場所からすかさず自身を引き抜いた少年は、昂ぶった熱を放った。



 気を失ってしまった真矢の見詰め、総士は細い息を吐く。

「……死なせや、しない」

 決意であり、断定の言葉が、誰に聞かれるでもなく空気に散りゆく。

 誰に知られなくても良い。
 総士の持つ、最も強い想い――それはきっと、彼の戦う力となる。


 愛しげに少女の頬を撫でた少年は、彼女の腹部に付着する白濁の液を目にして、ふたつのものの白さに初めて頬を赤くした。




 ―――彼女の平穏が、幕を閉じる。






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