この話は「裏」要素にがあります。
18歳未満の方、意味を解さない方、嫌悪される方はお戻りください。
閲覧は自己責任でお願いします。読んだ後の苦情は受けかねます。





















<



















Last night waltz





 気付いてしまった。
 最後の最後に。
 この、抗いようのない気持ちに。

 小さな身体を掻き抱く。あたたかな温もりは肌に優しいのに胸に突き刺さるようだ。
 華奢な肩に顔を埋めると甘い香りが鼻孔をくすぐる。香水のそれとはまた違う春歌の匂いは砂月をたまらなく惑わせて、きつく目を閉じた。
 トクトクトクと速い心拍数。自分のものにも彼女のものにも聞こえる。
「……抱かせてくれ……」
 言葉はぽろりとこぼれ落ちて、口にした砂月の方が驚いた。そんなことを言うつもりはなかった。
 校則違反で退学という危険な行為という以上に、那月へのひどい裏切りだ。そう分かっているのに、形にしてしまったことでハッキリと自覚してしまった。
 春歌を抱きたい。
 最後に。最後だから。
 はじめてだろう彼女の唯一が欲しい。
 これよりない自分の存在証明だとも悟ってしまった自分はたまらなく汚い。砂月は吐き出した望みを否定は出来ずにただ春歌を抱きしめる。
 長いようで短い時間。少年の腕の中で固まっていた彼女の手が、かすかな力で砂月の服を握った。
「わたしに……あなたを、刻んでください」
 震えながらもきちんと返された春歌の答えに砂月は息を呑む。それは求めた返事であり、望まぬ返事でもあった。矛盾しているのは分かっている。砂月の願いを受け入れることは、互いに守ろうとしている那月を傷つけることだ。そう痛いほど理解していても、どうしようもなかった。
 求め、与えられた――これほど嬉しいことがあるだろうか。
 俯く春歌の顎に手を添えて上を向かせる。悲しく潤んだ目で恥じらいに頬を染める少女の唇を、衝動のまま貪った。

 縮こまる春歌の舌を絡めとり蹂躙する。後頭部を押さえて、後退しようとする彼女を離さない。背の高い砂月に対して少女は小さく、腕の中にすっぽり収まっている。逃がすはずがなかった。
「……は……んぅ」
 呼吸が苦しげな春歌を時々解放しては息をさせる。それすら舌は差しこんだままで、どれほど余裕がないのかと砂月は自嘲した。
 左手は少女の頭から離さず、右手で彼女の服をまさぐっていく。カットソーの後ろから手を滑らせるとなめらかな肌の感触に熱を煽られた。
「さ、つきく……くる、し」
 すっかり力が抜けて砂月に寄りかかる春歌が乱れた息で訴える。唇は唾液で濡れて光り、潤んだ瞳がたまらなくいやらしい。ズクンと身体の中心が脈動した。
「あんまり声を出すなよ」
 学校の性質上、寮の部屋も防音仕様になっているが用心するに越したことはない。砂月は春歌の耳元で忠告すると、ほっそりしたその首に唇を落とした。
 噛みつきそうな衝動を押さえて、痕をつけないよう吸いつく。声を押さえなければならないのと同じ理由でセックスの痕跡は残せない。直に肌と肌を合わせたいが、服も脱がないほうが安全だろう。それがもどかしくてしょうがない。
「っ……ふっ……」
 顔を真っ赤にして声を押し殺す春歌がいじらしく、砂月の息も徐々に荒くなっていく。
 右手に続いてカットソーの中に侵入していた左の手で少女のブラジャーのホックを外す。ビクッと震えた春歌をなだめるように背中を撫でて、彼女が噛みしめる唇を舐めた。
「あっ……!」
 仰け反って逃げようとするのは反射的な行動なのだろうが今はしてほしくない。背中に残したまま左手でそれを防ぎ、小さく開いた口をキスで塞ぐ。
 キスなどではなかったかもしれない。ぐちゅぐちゅと音を立ててふける行為は補食にも性交にも似ていた。
 薄目で春歌が口付けに気をとられているのを見、拘束に使っていない右手をスカートの下に滑らせた。
 じんわりと汗ばむ太腿が掌に馴染んで吸いつくようだ。撫でさすり、小さく反応を見せる春歌の様子を伺いながらショーツに指を侵入させればこれには大きな身体の揺れで返された。
「んんっ」
 いやいやと言うように顔を振って砂月のディープキスから逃れる。小さな腹立たしさが生まれて、薄布の中で意地悪く指を蠢かせた。
「ひゃあっ!」
 押さえられなかったのか高い声が響く。これには砂月もやや焦りを覚えて、動かしていた手を止めた。一声鳴いてくったりと肩に寄りかかる少女の耳元で告げる。
「やめては、やれない」
「やめ、ないで……」
「時間がない」
「はい」
 本当はゆっくりと時間をかけて彼女を愛して繋がりたい。しかしいずれ戻るルームメイトがいる限りは無理で、それ以上に早く消えなければならない自分がもどかしい。心臓がジリジリと痛かった。
「ああ、お前の声は俺が飲めばいいのか」
「え?」
 疑問に顔を上げる春歌の唇に噛みつくと、彼女は学習したのか素直に口を開けて砂月の舌を迎え入れる。こうしてキスをしていれば春歌の声は砂月の喉に消えるだろう。
 腰に移動させていた手をショーツへと戻す。今度は春歌を驚かせないよう怯えさせないようそろりと指を滑らせた。
 見えない少女の花芯はわずかに湿り気を帯びている。秘裂の感触にごくりと砂月の喉が鳴った。ズボンがきつい。
 春歌が砂月に体重をかけているので添えているだけになっていた左手を、ほったらかしにしていた胸のふくらみに回す。ふわふわとしたやわらかさに指が沈み、少女の身体が身震いした。
「ん……」
「……ふ、ぁ……っ……」
 服で見えなくても、胸の先端の硬さが指に触れている。親指と人差し指でそれをつまんでこねると、彼女はぴくぴくと反応した。
 辛抱強く撫でていた花芯はようやく綻び始めて、わずかに零れてきた蜜を掬い取って慎重に奥に指を進める。
 指一本でもきつい春歌の中はこれから自分を受け入れられるのかと不安になり、キスを中断してそっと相手を伺った。
「さつ、き……くん?」
 唇はキスのし過ぎかやや赤くはれぼったく、端からは飲み込みきれなかったらしい唾液が落ちた。上気した頬や熱に溶けた瞳という砂月を見上げる顔の扇情さは男の気遣いなど容易く吹き飛ばす。
 衝動的に動きそうになった身体を押さえるために砂月は春歌のうなじに顔を埋め、獣のような自分を宥める。細い首筋に頬や鼻をすりつけ、時には加減に気をつけながら噛みついた。
「そんなエロい顔をして……誘ってるのか?」
「やっ、ちが……」
 耳元で囁けば想像通りに春歌は否定の言葉を口にするが、彼女の体は素直に男を受け入れようとし始めている。中に入る砂月の指の本数は増え、花の芽が控えめだが確かに存在を主張するように膨らんいるのが感触で分かった。
「違わない」
 言い切り、再び春歌の口をキスで塞ぐ。それと同時に秘裂は指を入れたまま、親指で少女の敏感な真珠を強くこすりあげた。
「んーっ!?」
 春歌が目を見開いて身を襲う刺激を訴える。それは無視して胸の果実も強めに引っ張り、さまざまな愛撫を施した。
 また逃げようとする彼女を拘束するために途中で左手を細い腰に回し、容赦なく追い詰める。やがて、ビクビクと震えて春歌は達した。
 封じていた口を解放すると春歌は砂月の胸に倒れこんでくる。肩を上下させて苦しそうに息をする姿にもっと丁寧に愛したいと胸が痛んだが、何度思っても仕方のないことだ。
「春歌、足あげろ」
「……ぁ……」
 呼びかけは脱力する少女に聞こえたらしいものの、彼女の身体はろくに動かない。はじめてのことに動けないのだろう。
 ぐったりした肢体を片手で持ち上げ、春歌の中に入っていた指を抜いた手でそのままショーツを片足脱がせる。彼女の愛液で濡れた小さな布切れは、右足首あたりに絡めたまま放置した。
「あ……ゃ、ひぃ……っ……」
 再び春歌の中をくちくちと指でいじっては広げる。苦痛の色は見えないが、砂月を受け入れるには狭いことは明らかで。もっと慣らさなければと分かっているのに、砂月の限界と時間の問題が差し迫っている。
 迷いながら少女の弱いと分かるポイントを集中して擦っていると、高く鳴いて顔を跳ねあげた春歌が砂月の胸元を力なく掴む。そして明るい色の頭が鎖骨のあたりを甘えるように押し付けられた。
「わたしは、だいじょうぶ、です」
 春歌の顔は快楽に溶けていても羞恥と怯えが薄く見えて、それでも砂月に応えようとする様が健気で愛おしい。微笑む彼女の鼻に自分のそれを擦りつけて、動物のじゃれあいみたいな触れ合いで了承の意を返した。
 砂月は少女の中から指を引き抜き、とうにいきり立っている自身をズボンから取り出す。春歌の蜜で濡れた手を滑らせてわずかでもが潤みを持たせられればいいと思った。
「痛かったら俺に噛みつけ」
「は、い」
 砂月の足に座る彼女を少し持ち上げ、剛直の先端を春歌の秘裂に数回滑らせる。それだけで興奮のあまり背筋がゾクゾクする。熱さに引き摺られるように中に押し入った。
「っっ!!」
 声なき絶叫が、腕の中で硬直した春歌から聞こえる。
 侵入者を拒む締め付けの痛みに砂月は奥歯を噛み締めた。腕にしがみついている春歌の手が爪を立てているのも感じて、どれだけ彼女にショックが大きいのか窺える。
 しかしこのまま止まっても退いても互いに辛い時間を引き延ばすだけだ。砂月は暴れたいという身体の訴えを黙殺して、春歌を慎重に支えながら彼女の背中を撫でる。
「春歌、息しろ」
 彼女が好きだと言うこの声で辛抱強く囁きかける。細い呼吸が繰り返されて時折力が抜け、その時に少しずつ奥へ進めたが反発が強くて中々先へ行けない。
 顔色をなくして耐える春歌にこれ以上を求めるのは出来かねて悩んでいると、小さな手が弱々しく砂月を叩いた。
「わた、し、だいじょうぶですよ?」
「っ……お前……!」
 この生き物はなんだろう。泣きたいような心地で思う。突き放しても傷つけても離れていかず、今もこうして身を差し出す。
 砂月は春歌の身体を支えるのではなく落とすために腕の力を変化させた。
「あぁッ!」
 鋭く叫んだその口をキスで封じ込めて、悲鳴を喉の奥で受け止めながら春歌の中へ入っていく。楔を最後まで打ち込んだ瞬間、少女が激しく跳ねるので強く抱きしめた。
 屹立を包む熱さに重たい息を吐き、微動だにしない相手を伺う。ゆるゆる襟足を撫ぜると明るい色の頭がどうにかといった風に持ち上がった。
「……さつき、く……?」
「お前の中にいる」
「は、い……分かります。わたしたち、ひとつですね」
 春歌は青ざめた顔で幸せそうに微笑んで、細い腕を砂月の背に回す。
「……ああ」
 なにかこぼれ落ちそうになるものを我慢したせいで出た声は変に掠れていた。
 春歌のうなじを撫でていた手ともうひとつの手で彼女の頬を包み、まろやかな頭に頬を寄せる。さまざまな感情が混ざりあって泣きそうな心とは裏腹に、身体は欲にまみれて解放を強く求めていた。相手を気遣うにも限界だ。
「……っ……」
「ッ!」
 春歌を抱き締め直して弱く突き上げれば、少女は息を詰めて砂月にしがみつく。だが制止や拒絶のようなそぶりはなく、それが砂月への答えだと分かった。
 はじめて他者に暴かれる秘裂が血を流したのかわずかな潤滑油を中の男根で感じ取り、事実スムーズになった抜き差しに溜め息が出る。
 熱い。きつい。気持ち良さに汗が流れて、それすら感覚を高めた。
 右の鎖骨あたりの布地が引っ張られる違和感に春歌を窺えば、彼女が噛みついている。横から見ても辛そうな表情にやや胸が痛むがもう止まれない。
 砂月は春歌を支える手はそのままに、右手を少女の下肢に伸ばした。
 二人が繋がっているところに指を滑らす。小さな蜜壷がめいっぱい広がって砂月を受け入れていて、そこから伝う粘液を掬って春歌の敏感な真珠を引っかいた。
 途端に大きく反応する春歌に、痛みの中とは別の感覚が存在することを教えるように強い刺激を与えた次には優しくこする。その間も律動は止まることなく、最奥まで突いては引き抜き、時にはこねて回すように腰を動かす。
 勢いがついて強く押し入れば、衝撃が深かったのか背を反らした。
「さ、つき、くん……さつきくん……」
 か細くも確かに呼ばれる自分の名前。三文字のそれは存在していることの証明でもあって、いつまでもこうしていたいという思いが止められない。
「春歌……。……ッ……!」
 悲鳴に少しだけ甘さを混じらせて泣く彼女を抱いて口付けた。
 二人とも目を閉じないキスは、互いにこの時間の終わりを分かっているのだと知らしめる。口の中で、砂月は言葉にしない好きを彼女に送り、春歌は彼に同じものを返してくるたような気がした。
「んん……は……っ!」
 わずかに砂月に応えて蠢く内壁は屹立を離すまいとするようで、締め付けに誘われるまま攻め立てる。繋がっている口内から伝わる喘ぎが春歌の限界を知らせて、咄嗟に細い腰を掴んで奥深くまで突き刺した。
「っ……」
 弾けた熱を春歌の中に注ぎこむ。そのリスクを考えないでもなかったが、ゴムを探してつける余裕なんてなかった。
 快楽を拾えているのか分からない春歌の秘所はそれでも健気に砂月を包みこんで動き、男側にはたまらない。最後の一滴まで彼女の中に出し尽くして、顔を離す。
 倒れこんでくる春歌を胸に寄りかからせて、砂月は長い息を吐いた。
 消えたくない。でもこれで去れる。死んでも、いい。
 精を吐き出した余韻で呆ける思考に、矛盾した思いがするりと浮かんで浸透していく。それはまるで氷水のように砂月に冷静さをもたらし、現実へと戻していった。
 腕の中にはぐったりとした春歌。右腕でその頭を抱えて髪をずらすと、気をやったのか目を閉じている。砂月の酷い行いをすべて受け入れてくれた女。自分が汚したはずなのに聖女のように見える。
 あまりにも感傷的な自分を頭を振り、力を失ったものを花芯から引き抜く。同時にとろりとしたものが零れ落ちてきたので、春歌を片腕で抱いたままどうにかベッドサイドのティッシュに手を伸ばして引き出し、それを受け止める。
 秘裂に指をそっと差し入れて中に溜まっているものを掻き出した。
「んっ……」
 本格的な気絶ではなかったらしい少女が小さく呻き、ぴくぴくと砂月の与える刺激に体を揺らしながら目を開ける。濡れた琥珀色の瞳がぼんやりと見上げてくる。
 まだ上手く頭が働かないらしい春歌に苦笑して処理を進めていくと、徐々に表情に感情が表れてきた。
「すっ、すみません!」
 体を清め、片足に引っかかったままの春歌の下着を手にかけたところで完全に意識を取り戻した彼女が顔を真っ赤にして謝ってくる。慌てて砂月の手を押しとどめ、自分の身なりを整え始めた。
 ぬるま湯のような空間が消えていく。うたかたの時間は終わりだ。
 事が露見しないよう余韻に浸ることもできずに後始末をしたように、砂月も去らなくてはならない。
 いつの間にか春歌がこちらを見つめていた。
 今にも泣きそうなのに、決して涙をこぼさない。絶対に砂月から、那月から逸らされない瞳。砂でできた城みたいな自分のことも覚えていてくれるだろう。
 本当に最後だと、砂月は春歌を抱きしめた。


 気付いた気持ちを、決して口にはしない。
 望むのは那月と春歌のしあわせ。

 でもどうか、自分がいたことを忘れないでくれと願うことを許してほしい、と。
 意識が薄れて消えるまで、そんなことを考えていた。






inserted by FC2 system