この話は「裏」要素に溢れています。
18歳未満の方、意味を解さない方、嫌悪される方はお戻りください。
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いつもと、違う顔。 020:君は君のままで 演技など出来なさそうなナナミは、予想を裏切って中々上手な顔で笑う。 どことなく漂うぎこちなさが、腹黒い大人達には受けているらしい。ナナミはいつも立派に名代業務を乗り切っていく。 パーティなどでは、上流階級の壮年の名士達はもちろん、その子弟や若手も出席していおり、その手の少年青年にとってナナミは格好の獲物だった。 なにせ彼女は、今現在活躍目覚しい同盟軍の軍主の姉。 あわよくば婚姻関係を結び、将来この地を統治するかもしれない人間の血縁関係になっておきたいと狙う者が後を絶たない。 ナナミはそういう目で見られるであろう事を軍師達から教えられ、その対処法も知っているが、大切な彼女をそんな汚れた目に晒されるルックの心境は穏やかざるものがある。 故に、パーティが終わった後のルックの機嫌は最悪だった。 「はぁー……疲れたぁ」 ようやくパーティなんて気疲れするものを終え、本拠地に帰ってきたパーティ出席組はすぐに報告を求められて怒涛のような時間をこなしてようやく開放された。 着飾った二人を一目みたいと、夜だというのに群がる人々から逃げるべく、ルックはナナミを抱えて転移魔法を使用し……ルックの部屋のベッドの上で一息ついた。 魔法使用時があまりに慌しかった為か、少年が少女を抱えてベッドに横たわるという危険な状態になっている。 「お疲れ様、ルック君」 さきほどの宣言通り疲労した顔のナナミが、ルックの胸の上から労ってくる。疲れているせいか、彼女の身体はいつもより温かかった。 「もう二度とごめんだね」 「私もそう思う……。 けど、またあるんだろうな。そしたら、ルック君もう来てくれないよね」 ほうっと悩ましげに息を吐き、上目遣いでそんな事を言われて断れる恋人はいない。それはルックも例外ではなく、いかにも仕方がないという風を装って返答する。 「あんたが行くなら、ついていっても良いよ」 「え? ほんと!?」 それだけでとても嬉しそうに笑う少女。 いつも爽やかな石鹸の匂いがするのに、今日は花のような甘い香りがする。ナナミの髪に鼻を寄せてその香りを嗅いではたと気付く。 非常に良い条件が揃っている事に。 今は夜。ここはしっかり鍵のかかっているルックの部屋。ベッドの上に横たわる男女。 健康的かつ健全な青少年は、次の行動を即決した。 自分の上でくつろぎきっている少女の髪を引っ張り、こちらに注意を向けさせて口付ける。何事かと驚いて硬くなった身体は、口付けの間にほぐれていった。 「……ルック、君?」 不自然な位置のせいで上手く息継ぎが出来なかったらしいナナミは、やや潤んだ瞳でルックを覗く。その目が、彼を煽るとも知らないで。 「嫌?」 「嫌じゃないけど……」 行為自体は初めてではないので、恐怖といった事からの言い淀みでは無いだろう。少年は黙って少女の言葉を待つ。 「ドレスは、脱がしてね」 顔を赤くして述べるナナミに、もう止まれないなとルックは人事のように思った。 しゅるりしゅるりと、布の擦れる音が響く。 大部分を絹で作られた上等なドレスは手触りが良くて、随分色々と下に重ねているので脱がせる方は中々楽しい。 ナナミの懇願からドレスとその付属品だけは丁寧に畳んで机の上に放置し、後のものは適当に放り捨てる。 着飾らされたナナミは装飾具の類もつけており、耳たぶについていたものはルックが口で外した。 「んっ」 それが痛かったのかなんなのか、ナナミが鋭い声を上げる。 「痛い?」 「良く分かんない」 痛みも快楽に変わり始めているらしいナナミが困惑した顔をするので、口に挟んだままのイヤリングを自分が脱いだ服のところに投げた。もう片方のものはそのまま放っておく事にして、手と足の装飾具以外身を纏うものをなくしたナナミを眺める。 ところどころ傷のある少女の肢体は、それでも美しい。 以前つけた首筋の赤い華が薄れているところに、やや乱暴に噛み付いた。 「み、見えるとこはだめだってば!」 「覚えてたら善処するよ」 「ちょ、ちょっと……あっ」 尖ってきた胸の頂をぱくりと食まれ、ナナミは強制的に言葉を遮られた。 小さな果実を舌先で転がし、甘噛みし、吸い上げる。 硬さを増していくものを思う存分楽しんでから、鎖骨付近から胸、腹部、太腿の内側と唇を滑らせた。時々強く吸っては、所有印を刻むのも忘れない。 その度にナナミが甘い声を上げ、最後の方ではそれを望むように少年の緑がかった濃茶の髪を掻き乱す。 「ふっ……あ、やぁ……っ」 十分に濡れた彼女の中心に指を入れると、組み敷いている身体が跳ねた。 汗でしっとりとした太腿が無意識に閉じようとするのを遮って、ルックの指が進行を開始する。 少なくない情交の中で、ナナミの弱い場所は知り尽くしていた。 狭い秘所を広げるように指を動かし、ナナミの顔に無理がないと見ると指を増やしていく。それと併行して、ルックのもう片方の手は胸の頂を責め、舌は花の芽を舐め上げては弾いた。 「ルックく……も……っ」 与えられる刺激はもはや苦しく、息も絶え絶えなナナミが涙ながらに訴える。 自分しか見る事の出来ない彼女の姿に、ようやく先程から抱え続けていた苛立ち―ナナミに群がる男共への嫉妬心―が薄れていくのを感じたが、それが逆に面白くなくて少年は乱暴にナナミの敏感な場所を擦った。 「あぁっ!!」 限界ギリギリにいたナナミはそれだけで呆気なく達し、一瞬身体を硬直させてぐたりと弛緩する。 荒い息を吐いて動けずにいるナナミには悪いと思ったが、彼女の波が治まるまで待つ事が出来なかったルックはそんな状態の少女の中に自身を突き入れた。 「――――っっっ!!」 ナナミが声なき悲鳴をあげる。 達したばかりの身体と、そのせいで感覚の鋭くなった場所に、この刺激は強過ぎたのだろう。しなやかな身体が大きく跳ね、いつの間にかルックの背に回されていたナナミの手が少年の背に爪痕を刻んだ。 その微かな痛みも、今のルックには快感に等しい。 意識せずに力が入ってしまったナナミの身体は、自らの中にある楔を締め付けてしまって己を追い込み、ルックをも昂ぶらせる。 「はぁ……っ」 身体を襲う快楽を逃そうと、ナナミが無意識に大きく息を吐く。きつい締め付けにルックは眉根を寄せ、少女と同じく呼吸を整えた。 すぐにでも激しく動きそうになる衝動をどうにか押さえ、自分が唯一進んで触りたいと思う存在を見下ろす。 と、ナナミの耳元で小さな光が見えた。 窓から差し込む月光が光源であるこの部屋の中、光るものなどありはしない。 思わずルックの目が発光したしたものを探せば、それはルックが外さなかったナナミのイヤリングの片方だった。 「……夜光石?」 暗闇でコバルトブルーに光る宝石。 「え? な、何……?」 完全に動きを止めたルックを訝しみ、ナナミも閉じてしまいがちだった瞳を開ける。 「あんたのつけてるイヤリングの石が光ってる」 良く見てみれば、ブレスレットとアンクレットについている丸い石もぼんやりと光を放っていた。 「ほんとだ……気付かなかった」 右手首に纏わりつく優美な鎖と玉とうっとりと眺めたナナミが瞳を細める。 汗を浮かべる上気した面がほんの少しだけ青い色に染められて、その様はどこか軍主名代をこなしている人形めいた彼女を思い出させた。 元気でお転婆が代名詞とも言えるナナミの顔が綺麗になりを潜め、弟を案じる気持ちだけで気苦労ばかりが多い外交業務に携わる。 彼女の想いそのものの姿は強く綺麗だけれど。 ピンと張り詰めさせた小さな肩が悲しい。 掲げられたままの手を取り、武器を持つ者の指を口に含む。 「ん……っ」 一本一本丁寧にしゃぶり終えたところで、ナナミの意識が行為に戻った事を確認したルックは律動を開始する。 ナナミの中に存在する事が出来るこの瞬間が、彼は好きだ。 繋がりあう部分からの刺激は、生まれてから纏わりつくものを束の間忘れさせてくれ、間違いなく自分が抱いているというのに、しっかりと抱かれているような錯覚に陥る。 だから、抱き合うという表現が一番しっくりくるののだ。 「い……あぁん!」 始めはゆっくりだった動きはやがて激しくなっていく。 少女の声と内部から限界の近さを察した少年は、嬌声をあげる彼女の唇を自分のそれで塞ぎ、二人は同時に果てた。 自分の腕の中、全身を預けて甘えるナナミを素直に愛しいと思う。 たとえこれが別離の決まった恋だとしても、抱く感情は本物だと言える強さと愚かさを、ルックはナナミから教わった。 「あったかいね」 ぽつりと、独り言のようにナナミが漏らす。 彼女からは相変わらず甘い匂いがして、それは決して不快なものではなかったけれどルックにはいつもの清潔な匂いが懐かしい。 「好きだよ、ルック君」 少年から飽きる事無く髪を弄られ、口付けられる少女は、色事の後だとは思えぬ清純な表情を浮かべて告白する。 それは間違いなく愛の言葉だというのに、色っぽさが微塵もない。 言葉にするのが得意ではない魔術師は苦りきった顔をするが、何か言わなければならないと口を開く前に、唇に指を置かれて軽く目を見開いた。 「無理しなくて良いよ。もう言ってもらったもん」 そう言って自分の腹部――いまだ男の熱を残す部分に手を触れたナナミに、珍しくルックが顔を赤くする。 「ほら、もう寝るよ」 「はいはい」 照れ隠しにナナミの頭を抱え込んだルックは、腕に当たった冷たい感触にいくつかの装飾具の存在を思い出した。 夜行石はまだ幻想的な光を放ち続けていたが、少年はそれら全てを少女から外して、先程と同じ場所へ放り投げる。 ナナミにあんな飾りは必要ないと。 用は済んだとさっさとナナミを抱き締めて寝る体勢に入ったルックに、少女が問う。 「ドレス、似合ってなかった?」 「何故?」 「ルック君、私がドレス着てからずーっと凄い顔してる」 やや悲しそうにするナナミに、自分のそんな顔に無自覚だったルックは胸中で舌打ちした。 正直、盛装したナナミは美しかった。 その事自体はルックも驚嘆したが、綺麗になって魅力を増した彼女に人の目が集まるが不愉快で、群がる男達に睨みをきかせていたなどとどうして言えよう。 どうやって言おうか悩むルックをよそに、彼氏から誉めてもらえなかったナナミは落胆する。 「もう良いよ、ルック君。似合わないの分かってたし……」 ナナミが無理に笑おうとするのを見て、ルックは衝動的に動いていた。 耳元に顔を寄せ、小さく囁く。 『似合ってたよ。他の誰にも見せたくないぐらいに』 それでも、やっぱり。 道着で野を駆けている君の方が好きだ、なんていう本音は飲み込んだ夜。 |