恋人達が話をしていた。
「そう。色々あったね」
「びっくりしました。それに……」
「それに?」
「みんなに助けてもらったんですけど、ツナ君が怪我をしちゃって。申し訳なくて」
「君はそんな事気にしなくて良いんだよ」
「でも」
「それより、その時の事話せる?」
「え?」
「君が来た時、沢田綱吉が怪我をした時の事だよ。
 誰が君達を攻撃したの?」
「え、と。黒い服で」
「ブラックスペル。ふうん」
「お猿……ござる、じゃなくて、ノザル、と、タザル? とか言ってたような」
「へぇ。なんか言ってた?」
「良く、覚えていないんですけど……ツナ君が戦ってた人に、『次はあんただ』とか。『草を刈るような』とか。『一瞬であの世だ』とか言われた気がします」
「……………………」


 扉が勢い良く蹴破られた。
「はいいいいいい!?!?」
「やあ、草食動物」
「ひ、ヒヒヒヒヒヒヒバリさん!?」
「ちょっと洗いざらい吐いてくれる? どこの馬の骨が、京子に手を出そうとしたわけ?」
「は? だ、誰の事でしょう!?」
「君が戦ったブラックスペルの猿」
「えー、と。オレもその、詳しくは……」
「思い出して。そいつが京子に言った事と、そいつの情報、全部話して」
「え」
「ちょっと咬み殺してくるから」
「ヒバリさん!?」
「僕の京子に手を出すなんて、良い度胸だよね」
「ヒイイイイイイイイイイ!!!!」
「うるさいよ。せっかく眠った京子が起きたらどうするのさ。
 キリキリ白状してよ、草食動物。じゃないと君から粛清するよ」



 ――後にボンゴレ十代目は語る。
 この時、雲の守護者は恐ろしい微笑を浮かべていたと。
 話したは良いが、そのままミルフィオーレに乗り込もうとする彼を止めるのは、多大な労力を必要としたと。

 そして。
 ボンゴレファミリーの中で、遠くない未来にブラックスペル太猿の死は確実のものになるだろうと認識が生まれた、と。




077:思い出せない、あのひと





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