夢の中で、私が言ったの。

 ――起きて。何やってるのよ、九楼撫子。起きなさい!
 それはもう凄い剣幕で怒ってた。
 悲鳴みたいな、引き攣った声で言うの。

 ――寝てる場合じゃないの、私っ。馬鹿、起きて!!

 馬鹿なんて言われてさすがにカチンときたわよ。
 私だって、起きなきゃって思ってたのに目が覚めなくて困ってたんだから。言い返したくても声は出ないし。
 そんな私に焦れたのかしら。相手は息を詰まらせてね。

 ――お願い、あの人をひとりにしないで……!!

 血が吹き出るみたいな叫びだった。変な話だけど、まだ耳に残ってる。
 それは濁流みたいな強さで、暗いところで動けなかった私にぶつかって、押し流して。気付いたら周りは明るかった。
 私は、ようやく目を覚ますことができたの。


 鷹斗? 泣いてるの?
 ……そういえば、最後に見た夢の中の私は、小学六年生の姿で、今のあなたにそっくりの表情で泣いてたわ。

 あれは、本当に私だったのかしら。



18 恋は盲目、愛は緘黙【かんもく】

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