この話は「裏」要素に溢れています。
18歳未満の方、意味を解さない方、嫌悪される方はお戻りください。
閲覧は自己責任でお願いします。読んだ後の苦情は受けかねます。





















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 何度目か分からない三人の夜。
「みんなで一緒に気持ち良くなりたいんです」
 とろけるような笑顔で那月が言った。


31 喰らう
(ragout)



 言葉の意味が分からず春歌は首を傾げる。
 長いキスから開放されて上手く頭が働かないせいかとも思ったが、何度それを反芻してもやはり理解は出来なかった。
「那月?」
 春歌の背後にいる砂月も疑問の声をあげる。それを受けた那月はさらに笑みを深めて、軽く唇を重ねてきた。チュッと響くリップ音が恥ずかしい。
 お風呂上りなのは三人とも同じだが、ベッドにあがってあっという間に春歌一人だけパジャマを剥がされていたので、それもまた羞恥心を煽った。
「三人でひとつになれたら素敵だと思いませんか?」
 それは砂月に向けられたもので、聞いた彼はどうやら双子の片割れの意図が分かったらしい。雰囲気で察せられる。
 春歌のうなじに肯定とも否定ともつかない砂月の吐息がかかった。
「……まぁ、そろそろ大丈夫だろう」
「砂月くん? あの……」
 一人意味が分からずに首を捻って砂月を見上げると、彼はしばし眉間に皺を寄せていたが、やがてにやりとした笑みへ表情を変える。その顏がするりと降りてきて春歌と重なった。
 危険だという本能の訴えがする。
 口付けを受け入れても、首の後ろのあたりがうそ寒いような感じが消えなくて落ち着かない。
「んむっ」
 少し開いていた唇から砂月の舌が入り込んだ。首を捩じる体勢が苦しいが、彼はそんなことに構わず春歌の口腔を思うまま貪る。
 口の内側を余すところなく舐めあげられ、かろうじて呼吸が出来るような激しいキスで頭がぼんやりした。
「っ!」
 ふわふわする春歌の意識を引き戻す強い刺激に身体が跳ねる。瞑っていた目を開いて視線を動かすと、那月がどこか拗ねた表情で胸の先端を抓っていた。
「僕も忘れないで、ね?」
「ひ、やぁっ」
 両方の乳頭を、少し痛みを感じるくらいに引っ張られて仰け反る。すぐに力は加減されて、くにくにと強弱をつけられて揉まれて甘い快感が全身へと広がった。
 このまま流されてはいけないと必死に理性を繋ぎ止め、口を開く。
「あ、のっ! さっきのは、どういう――」
 質問をすると同時に、どこかでこれは聞かない方がいいような予感が湧きあがる。しかし言葉は形になってしまっていた。
 最初に言い出した那月が目を細める。表情は笑みの形を取っているのに、砂月の時と同じ寒気で背筋がゾクリとした。
「きゃっ!?」
 急に身体が浮き上がり、ぐるりと向きを反転される。あっという間の出来事で二人のどちらにやられたのかも分からなかった。砂月に寄りかかる形からその足を跨ぐような対面に、那月に背を向ける格好になった。
 真正面から向かい合った砂月が、同じ顏なのに那月と全く違う薄い笑みでまた口付けてくる。
 今度は春歌の舌を引きずり出して、自分のそれでくちゅくちゅと交わらせて卑猥な水音を立てた。
「ふぁあ……」
 背後から大きな手が腰のあたりを撫でる。それは肌の上を滑り、やがて臀部を両手で掴んだ。片手はそのまま、那月は予想外の部分を指で押した。
「なっ!?」
「あ、キュッってした」
「だ、駄目です、そんなところ……!」
「今更だろ」
「そうですよぉ。今までたくさんここも可愛がってきたんですから」
 那月が嬉しげに言って弄るのは春歌のもっとも恥ずかしい場所。確かにそこに弄られるのは初めてではないが、何度触れられても慣れはしない。
 いやいやと首や身体を振っても、体格の良い二人に挟まれて、また支えられているので逃れられなかった。
「もう僕達を受け入れてくれます」
 鼻腔に流れてきた甘酸っぱい匂いに春歌の身体が総毛立つ。人工的な苺の香りは覚えがあると同時に、数々の卑猥な記憶と直結していた。
 とろりとした感触が腰のあたりから臀部へと流され、苺の匂いのするそのローションは春歌の後ろの窄みにべたべたと塗りつけられる。
「やぁっ!」
 冷たいローションがたっぷりと肌に落とされて、それでぬるぬるになった那月の指がそうっと春歌の菊門へ侵入を開始した。
「あっ、あっ……ァあ」
 本来なにかを受け入れる場所ではないそこは、彼らとはじめて身体を繋いでからそう日を置かずに触れられた。
 はじめは指で開かれて。徐々に思い出したくない数々の道具を使われて。認めたくはないが、今では一本二本と難なく男の指を受け入れる。それどころか快楽さえ拾うようになってしまっていた。
「おい、こっちも忘れるなよ」
 砂月の低い声が鼓膜を震わせてハッとなる。さきほど那月がそうしたように胸の尖りを引っ張られ、身体がビクリと跳ねると今度は優しく指の腹で擦られた。
「さつき、く……っ、あぁッ」
 春歌の右の胸を掬い上げるように揉む手はそのまま、砂月の右手が下へ降りていく。那月の菊門を弄る指は二本から三本へと増え、さらに入り口を広げるような動きを繰り返す。
 砂月の手は腹部を通り、花芯へ到達する。すでに濡れている秘所はぐちゅりと音を立て、男の指で開かれ蜜を零した。
「ひゃぁんッ」
「ぐしょぐしょだぜ。それにもう解れてきてる」
「まだそっちには何もしてないのにね。こっちでいっぱい感じてたの?」
「ちがっ、そ、んな……!」
「違わないだろ」
 スムーズに奥まで入った砂月の長い指が、春歌の内部のざらりとしたところを強く擦る。敏感なところを容赦なく責められて身体が反り返った。
「ふふ。ハルちゃんとろとろな顏してます。すごーく可愛い」
 那月が耳に吹きこむように囁き、彼の声に弱い上に耳朶に息がかかって自然と身体がピクピク反応してしまう。
 もう口をきちんと閉じることも出来なくて、喘ぎと共に涎が口角から零れるのが分かったが、それは砂月にじっとり舐めとられてそのまま濃厚なキスへと変わっていった。
「……は、……んん……」
「さっちゃんの指があるの、分かりますね」
「ッ!」
 前と後ろの穴の壁越しに那月と砂月の指が互いを確認するように蠢く。合わせ鏡のように同じ位置で内壁をくすぐる二人の指に、春歌は激しく頭を振った。
「後ろでも充分よさそうだな」
「ゆっくり準備した甲斐がありました。ぜーったい三人でひとつになりたかったんです」
 陶酔した感を含ませて言う那月がやわやわと臀部を揉みしだく。その刺激にも腰が震えた。すると中に入っている砂月の手の親指が、春歌の花芽を探り出しる。
 ただでさえ二人の愛撫に追い詰められているのに、砂月が空気に触れさせたそこはもっとも快楽を感じる箇所。身体が、そこがどうされるかを悟って勝手に小刻みに揺れた。
 予想通りに、男の爪がコリッと花芽を引っ掻いてから押し潰す。
「アっ!?」
 内股がガクガクして体を支えられず、砂月の太腿に座り込んでしまった。だがそれで二人の手が止まるということはなく、むしろ激しさを増して責めたてる。
 お尻を撫でていた那月の手がするりと前に回ってきて、砂月の指が踊るそこへ絡んだ。とても似ているけれど違う指たちが、もう膨らんで存在を主張している突起をおもちゃを弄るかのように突きまわす。
「ァーっ! はげし……やめ、あぁんッ! ひぃぃぃっ!」
 摘ままれ、こね回されたかと思うと押し潰されて。どちらの指かは分からずに弾かれた次の瞬間には掻き毟られる。二人からもたらされる強烈な快楽が苦しい。
「い、ぁ……! やめ、やめてぇえェ……っ!」
「「春歌」」
 ピタリと綺麗に重なった二人の声。身体が大袈裟に震えた。
「一度イっとけ」
「気持ち良くなって」
 双子たちは春歌のそれぞれの中の弱いところを削り、また花芽も容赦なく責めて、春歌の視界は真っ白に染まった。


 渇きで軽い痛みを訴える喉に、冷たい液体が滑り落ちるのを感じる。
 身体の欲求は強烈で、春歌は重たい瞼を開かないまま潤いを求めた。
「んっ、お腹が空いた子牛さんみたいですね」
「また叫びっぱなしになるんだ。今のうちに飲まておけ、那月」
「分かってますよぉ。はい、ハルちゃんもう一回お口を開けてください」
「あ……」
 言われるままに唇を開くと、同じ速度でようやく視界もクリアになった。
 目の前には端正な那月の顏のアップ。逃げる暇もなく彼の唇が重なって、口移しで水を飲まされる。驚いたものの渇きには抗えず、考える前にごくごくと喉を鳴らしていた。
 水がなくなっても口内の隅々をくすぐっていた那月の舌が、ちゅるりと音を立てて出ていく。彼の頬がうっすらと赤みがかっていて怪しい色香を放っていた。
「もっと飲みますか?」
「い、いえ。大丈夫です」
 熱を孕んだ双眸に背筋がゾワリとした春歌は慌てて首を振る。そうしてやっと、自分は寝そべるように那月に寄りかかかり、彼に覆いかぶされるように口移しで水を与えられていたことを知る。
 向かい側の砂月は、那月が手にしていたミネラルウォーターのペットボトルを受け取って自身も口を付けた。
 二人とも春歌が意識を飛ばしていた時間で着ていたものを脱いだらしく、熱を帯びてしっとりとした肌と直に触れ合っているのを感じる。
 腰と足のあたりに双子のいきり立った熱が当たっているのが分かって、身体の奥がきゅんと疼く。はしたない自分が恥ずかしくて目を閉じるも、足を大きく開かれて慌てて瞼を上げることになった。
「休憩は終わりだ」
「砂月くん……」
 春歌の足を抱えた砂月は、同じ顏の片割れと全く違う凄味のある表情で言う。
「本番はこれからだよ。今度こそ三人で一緒になろう」
 顏を覗き込む那月の顏は柔らかくも、双子の彼と同じ激しい欲情を瞳に浮かべていた。
 蕩けてぐずぐずの秘所に砂月が入ってくる。ゆっくりとした挿入でも体格の良い彼のものは春歌には大きくて、どうしたって苦しくなるのが常だった。
「あッ、ああぁ……」
 それでも砂月の入り方は優しい。息を吐いて彼を受け入れながら頭の片隅で思う。体格差のある春歌にできるだけ負担をかけないよう気遣ってくれる。
 ゆっくりと着実に押し進んでくる凶悪な強直は、やがてコツリと奥に突き当たった。
「は……ふっ……」
「……いつもより、キツイな。興奮してるのか?」
 からかいを含んで問うてきた砂月だったが、眉間に皺を寄せ、快楽を耐えているようだった。どこか切なそう様子に心臓が跳ねると、春歌の奥も同じように反応する。
「ッ。急に、締めるな」
「ん、そ、な、むり……!」
「二人ともまだイっちゃだめですよぉ」
 おっとりとしたストップが入る。春歌もそうだが、特に那月に弱い砂月がぐっと熱をこらえたのが見て取れた。相対する彼は何度か呼吸を繰り返した後にふうと息を吐き、那月に向かって頷いた。
 背後から脇の下に手が入れられ、寄りかかっていた那月の手で春歌の身体が起こされて、そのまま砂月へと渡されて抱きしめられる。
「え? あ……んっ。なん、ぁん!」
 砂月がベッドに寝そべって、彼に抱かれたままの春歌は自然と彼の上に乗っかるような体勢になった。
 中の突かれる場所が変わって息が詰まる。自重でお腹の奥にいる砂月がさらに深くに入ってきたような感覚。挿入からの続けざまの刺激が強烈過ぎて受け流せない春歌の状態を察してくれたのか、彼はその大きな手で背を撫でてくれた。
「んっ……」
 労わるような手の動きではあったが、敏感になった今の身体にはそれは愛撫でしかない。ほかのところには触れられないこともあり、ますます春歌は小さなその接触に反応した。
「っ、春歌……!」
「ハルちゃん、腰がちょっと動いてます。さっちゃんの手がイイんですねぇ」
 自分では分かっていなかったことを指摘され、恥ずかしさで顏がカッと赤くなった。自分はどれだけはしたなくなってしまったのだろう。
 二人によって開かれ、愛されてきた身体は、今では彼らのほうが隅々まで知っているんじゃないかとも思う。
 春歌の中に入った砂月はそれ以上動かず、撫でる手も止めて両腕でがっちりと背を抱いてくる。抱擁というよりも拘束めいたそれに彼を見上げると、額へのキスで返事をされた。
 身体の中に男を受け入れている圧迫感以外には刺激が少ない状態は、少しだけ春歌に理性を戻させる。しかしそれも、後ろにいる那月の手がお尻にかかった瞬間に吹き飛んだ。
 もう何をされるかはさすがに分かっている。
 双子の彼らを好きになり、二人と恋人になってからのいくつもの夜。口に出せないようなことを行われてきたのはこのためだったのだ。
 ぶるりと身体が揺れる。それは恐怖か期待か分からなかったけれど、那月と砂月からもたされるものであるのならばそれでいい。
 恥ずかしさも恐怖もたくさんあったが、春歌の答えは出ていた。
 後ろの窄まりがぐにぐにと押され、左右に引っ張られる感触がする。知らずこくりと喉が鳴った。
「一応もう一回使っておきますね」
「そうだな」
 また強く香る苺の匂い。尾てい骨のあたりに落とされた冷たさは、菊門の中へたっぷり入れられて喘ぐ。粘度の強い半液体を追って当てられる熱を感じた。
「いきますよ〜」
 かけてくれる言葉は穏やかな那月の入り方は、砂月とは違って容赦がない。
 荒々しいのとはまた違う強引さ。男性を受け入れる場所でもその大きさにいつも苦しさを伴うというのに、今は準備されているとはいえ元々そういう箇所でないからか、身体の拒絶反応が強かった。
「ッ……! っっ……!!」
「息をしろ、春歌。唇噛みしめんな、切れる」
 自然と逃げようとする春歌をがっちり捕まえる砂月は、その顏に心配する色を刷いて言い聞かせてくる。
 はくはくと口は動いているのに上手く酸素を取り入れられない。はじめて彼らと身体を繋げた日にも似た衝撃は、二度目の破瓜かのようだ。
「――僕を受け入れて」
「なつ、き……く、ん……っ」
 少し切羽詰まった切ない囁きは、まるで那月が泣いているかのように聞こえる。
 快楽から自然掠れてもいると分かっているのに、それがどうして彼の泣き顔を想像させるのか。考えるよりも先に身体がその願いに答えるべく、緊張のこわばりを緩やかにしていく。
 春歌自身よりも先にそれを感じ取ったらしい那月は、一息ではなかったもののそれに近い勢いで自身を根元まで埋め込んだ。
「ひあァっ!!」
 ズンと奥に届く衝撃に、砂月の腕の中の身体が大きく跳ねた。
「っ……俺にまで、響くな」
「さっちゃんが、いるの、分かります」
 途切れ途切れの熱に浮かれた口調が双子の興奮を知らせる。二人を受け入れている春歌はそれだけでいっぱいいっぱいで、処理しきれない感覚に浅く呼吸を繰り返した。
 お腹どころか喉までなにか入っているかのような圧迫感は、しかしふたつの熱の脈動も合わさって確かな繋がりを伝える。 
「春歌」
 ずっと春歌を抱きしめていた砂月の腕がほどかれ、その右手で前髪をくしゃりとかきあげられる。重たい頭を持ち上げると頬が少し赤い彼の優しい笑顔があった。
「ありがとう、春歌」
 次いで、身を屈めたのか驚くほど近くで囁かれた那月のお礼に、自然と顔が緩んだ。感情が溢れて勝手に涙が流れる。
 何度も那月が言っていたことを痛いほど実感した。
「嬉しい、です」
「え?」
「なんだ?」
「私も、おふたりとひとつになれて……嬉しいです」
 三人での恋愛を良しとしているのはおかしいかもしれない。けれどこれが那月と砂月と春歌の幸せだと心から思う。
 口にしてから恥ずかしさが襲ってきて、春歌は砂月の鎖骨付近に顏を隠させてもらった。
 しかし。
「ああもうっ、可愛過ぎます!!」
「今のはお前が悪いっ」
「きゃ! あ、あああアあッ!?」
 突然動き出した二人に春歌は絶叫した。
 はじめて受け入れたばかりのところで那月が激しい注挿をはじめて、身体が前後に揺すられる。そうすると自然ともうひとりが入っている場所も擦れた。
 片手を握りしめてくれた砂月も下から突き上げ、また中を広げるように腰を動かす。ふたつの熱が、壁越しに動き回ることでもたらされるはじめての快楽はあまりに強く、一度果てている春歌をあっという間に追いあげる。
「ヒっ、待って……ぇんあ! ああああっァア!」
「イっちゃいそう? ハルちゃん」
「エロい顏しやがって」
「んむぅう」
 目尻を赤く染めた砂月に唇を奪われ、じゅるじゅると音を立てて舌を絡められる。彼の身体に春歌は乗りかかっている体勢のため、身体に揺すられると肌や胸が擦れてそれも快感を助長した。
「ぷはっ、も、らめ……やぁ」
 呼吸が苦しくて砂月の唇から逃れてわずかに首を振ると、右耳をかぷりと噛まれて身体が跳ねた。
「何度でも気持ち良くなって。可愛いハルちゃんを僕たちに見せて」
 熱い囁きが鼓膜を震わせ、耳の中に入り込む舌の感触に背筋にぞわりと寒気が走る。春歌の背後にいる那月は、唇へのキスの代わりに耳やうなじの後ろに何度も口付けを降らせた。
「あ……ああッ……」
 前と後ろで双子はぐいぐいと奥まで侵入しては春歌の弱いところを刺激しながら出ていき、また勢いよく入ってくる。
 目の奥がチカチカして、はしたない声も無意識に動いている腰ももう気にならない。
 ゴツリと深いところまで那月の強直が突き入れられ、春歌の背中が反った。涙で潤む視界に少し苦しげな表情で壮絶な色香を放つ砂月が映り、興奮しきったその様子に彼らを受け入れているところがきゅんと疼く。
「あッ」
 呻いた那月にグッと痛いほどに腰骨が掴まれ、首の後ろが大きく噛みつかれる。身体を駆け上がる電流に、砂月と絡んでいる手に縋った。
「や、ひあああぁあアアアァァ―――――――っ!!」
 もうそれ以上は入れない最奥まで二人に穿たれて春歌は絶叫して果てた。
「っ!」
「は……ッ」
 身体の奥に二人の迸りが注ぎ込まれている。ビクビクと痙攣しながら熱いものが身の内に染みていくの感じた。
 自分ではもう動けない春歌は双子の手で揺すられ、絶頂の中でも重ねられる快感に咽び泣く。彼らの放ったものを最後の一滴まで注ぎ込まれることにすら気持ち良さに震えてしまう。
「……三人、一緒でしたねぇ」
 陶然とした口調の那月は嬉しそうに囁く。彼はまだ落ち着ききらない春歌のうなじを甘噛みしてきた。噛んでは舐めて、舐めてはゆるく噛んでの繰り返しで、それは明らかにまだ満足していないと行動で語っている。
「那月」
「さっちゃんもまだ満足してないでしょう?」
 ふわふわとした意識の表層に双子のやりとりが流れていく。情事独特の疲労でこのまま眠ってしまいたい。しかし那月の柔らかなタッチが絶妙なところで加減を変えて春歌の意識を繋ぎ止める。
 ふう、と完全に春歌が身体を預けてしまっている砂月が大きく息を吐いたのを感じた。
「オイ、しっかりしろ」
 左頬に砂月の手が添えられ、目許あたりを彼の指が往復する。優しい手つきは安心を与えてくれるが、胎内に入ったままのものがどちらも存在を主張してきている。
 男の手ではっきりとしてきた意識で、春歌は思わず首を振った。
「も、無理ですぅ……怖いから、ヤです」
「怖いの? どうして?」
 驚いたように那月が問うてくる。口調に心配さを滲ませた彼は、前置きなく春歌の腕と身体を引っ張った。
「ひゃァんっ!」
 前触れのない体勢の変化は彼らをより深く受け入れる体位となり、彼らと繋がる箇所も擦れて甲高い悲鳴を上げてしまう。
「那月っ」
「あ、ご、ごめんね、ハルちゃん。あなたの言葉がすごく気になって……」
 砂月の珍しい咎めるような呼びかけに那月がはっとした様子で謝ってくれるが、突然の強い刺激に春歌ははくはくと息を吐いて快楽を逃すことに精一杯だった。
 那月は春歌をその胸に寄りかかるような格好にすると、そっと顔を覗き込んできた。彼は少し泣きそうな表情をしているが、今はそれを慮る余裕はない。寝そべっていた砂月も身を起こして、こちらを気遣わしげに見ているのが分かる。
 二人に大丈夫だとは言えなかった。過ぎる快楽は恐怖を呼ぶ。ぼろぼろと勝手に涙が流れて、頬から流れて体に落ちる。
「気持ち、良すぎて、怖いです……。私おかしくなっちゃいます」
 与えられる喜悦に心がついていかない。それなのに肉体は反応してしまって、そのズレがまた怖ろしさを呼ぶ。二人に触れられた身体は自分のものではないようだ。
 心はもうとっくに二人がいないと駄目になっているのに、この上身体までそうなってしまったら自分はどうなるのだろう。
 どんどん弱く、また貪欲になる自分がいる。
「ハルちゃん……」
 顏に影がかかったと思ったら唇に温もりが触れた。那月に顎をがっしりと掴まれ、食べられるようなキスを与えられる。激しいキスで酸素が上手く取り入れられず、顏も動かせない状態で右肩に痛みを感じて身体が派手に上下してしまった。
 いつの間にか閉じてしまった目をどうにか少し開くと、ミルクティー色の髪の毛が肩口に埋まっているのが見える。
「んーっ……!」
 硬質な感触が肌を通って骨に伝わる。砂月が獲物を屠る肉食獣のように強く噛みついているのだと、一拍遅れて理解した。はっきりとした痛みに反応した身体の奥が、自分の中の他人を拒んで締め付けてしまう。双子のそれはもうすでに硬く張りつめていた。
「はァ、さつ、……くん、な、きく……」
 逃げられないキスの合間に名前を呼ぶ。それは静止になることはなく、むしろ彼らを煽るだけのようだった。那月はますます舌を深く差し入れてくるし、肩から首を噛んだ砂月は耳たぶにも何度も歯を立てる。
「俺たちに狂え、春歌」
 低く掠れた音がダイレクトに鼓膜に響く。大好きな声の威力は凄まじく、短い言葉でも腰が震えて力が抜ける。逆の耳にちゅっとリップ音が聞こえて、やっと唇を解放してくれた那月が片割れと同じく耳朶を噛んでいた。
「おかしくなったあなたを見せて。そういうハルちゃんが僕たちはもっと見たい」
 優しくかけられた悪魔の囁きに、春歌の最後の理性が崩壊した。
 背後の那月に右胸の先端をキュっと摘まれ背中が弓なりになる。ぶつかってしまった彼の身体は男性的な硬さを感じさせつつ、汗をかいてしっとりと熱い。
 春歌の耳を散々なぶった砂月が距離を取り、残された左胸をわし掴んだ。息が詰まり、刺激が強くて閉じてしまいがちな視界に映った彼は、もともと白い肌の顏を上気させて快楽に歪めている。自分がそうしているのだと、いやらしい喜びで春歌の身体が震えた。
 自分ではもう上手く動かせない肢体は双子の思うまま、好きなように突き上げられる。
「ひゃあああんっ、んアっ、あーっ!!」
 自分と彼らの体液が混じりあったものの粘ついた音がひっきりなし聞こえ、それで滑りのよくなった二本の剛直が抜き差しされる。双子は時に同時に、時にタイミングをずらして春歌の内部を抉った。
「……春歌ッ」
「はる、か」
 もうどちらに呼ばれているのかすらよく分からない。朦朧とする意識は強い快楽に揺さぶられ、肉体は高みへ押し上げられる。
 砂月の右手が春歌の左胸の突起を二本の指で摘みながら、左手で接合部より少し上の膨らみを同じように指で挟んで引っ張った。
「んァっ!!」
 右胸をぐにぐにと好きなように揉みしだいていた那月の手までもが、皮から顔を出す肉芽へ延ばされる。彼の、笑ったからであろう吐息が後ろ首のあたりにかかった。
 ぞわりと背筋を駆け上る電流。並走する怖気にとっさに砂月の腕を強く掴む。ピンと足先が伸びた。
「――――!!」
 最奥を強く穿たれ、陰核を引っ掻かれ、春歌は今まで味わったことのないくらいの絶頂を迎えた。
 放たれた白濁がびゅくびゅくと子宮と直腸を満たしていく。朦朧とする春歌は二人との境界も曖昧に感じられ、本当に溶け合ってしまいそうだと思った。
「あ……ぁ……」
 あまりの絶頂感に身体の痙攣がなかなか治まらない。
 砂月は腰部を支えてくれ、後頭部に手を回してきてあやすように撫でてくれた。すると那月は春歌の腹部に手を滑らせて、片割れと彼が放ったもので少し膨らんだそこを何度もさする。
 くらりと視界が揺れる。意識が保っていられない。

 思考が優しい暗闇へ落ちていく中で、春歌は聞いた。
「みんなで一緒が気持ち良すぎて癖になっちゃいそうです」
 この夜の始まりの時と同じく、とろけるように甘い那月の声を。
「春歌を壊さない程度にな」
 ただ最初と違ったのは、片割れと同じ糖度を持った砂月の言葉だった。





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