板チョコ、アポロ、マーブルチョコ、キスチョコ。 ブラウンがベースでこそあるものの、カラフルな取り合わせのピアスセット。 甘い物が好きな彼を思い出して、気付けばそれを買っていた。 39 甘いものには目がないの
ドキドキしながら可愛いピアスを耳に嵌め、彼に前に立つ。 小さな事に気付いてくれる骸さんはやっぱりすぐに分かってくれて、瞳を細めた。 綺麗なオッド・アイ。サファイアの青とルビーの赤の輝きについ魅入っていると、彼が背を屈める。 整った顔が近づいてきて何事かと思っていたら、ぱくりと生温い感触に耳を覆われて硬直した。 「クフ。溶けませんね、このチョコ」 れろっと耳を、ピアスを舐められる。鼓膜を震わせる低音は卑怯だ。 「なっ……だっ……」 「まあ、僕が味わえる事に変わりはありませんけど」 抗議の声は、彼の唇に塞がれてその口内に消えていく。 彼の向こうに、驚いた顔の犬さんが見えた。千種さんが呆れたようなため息をついている横で、髑髏ちゃんが目を丸くしている。 恥ずかしさに動けないでいると、顔を離した彼がにこぉっと笑う。美しいのに邪悪なそれに頭の中で明滅する警告信号。 本能の忠告に逆らわず回れ右。逃げ出そうとしたのに、手首を掴まれて阻まれる。 「"チョコ"をください、京子」 耳に吹き込まれた言葉にギギギと音がしそうな動作で振り返った。 骸さんよりも、彼の背後に視線がいく。先ほどまでいたはずの三人がいない。 ――彼の部下は、敬愛する主の意を汲み取るのがとても上手なのだと、気絶を望む意識の端で理解した。 |