*標的256のネタバレ有りです。未読の方はご注意ください。



























「アレは僕の仲間というには、出来の悪すぎる子供ですが」
 六道骸(25)の爆弾発言だった。



71 ラブサバイバル




 子供という単語は多くの意味を含む。
  年のいかない幼い者。親がもうけた息子や娘。動物などの子。行動などが幼く、思慮が足りない者。古くは禿や陰間なども指した。
 多くの意味を知らない少年達でもその言葉がどういった意図で発せられたのかが気になり、そんな場合じゃないのに落ち着かないでいたところ、周囲の空気に負けた綱吉が恐る恐る訊ねた。
「あ、あのさ、骸。こ、子供って……」
 ただの童か実子か。続きが口に出来ない。だが頭の良い骸は綱吉の言いたい事を察したらしく、ああ、と頷いた。
「僕と京子の子供です」
 胡散臭いほど清々しい笑顔で落とされた爆弾は、核の威力を持っていた。
 その場にいた全員−あの白蘭でさえ−が例外なく固まる。彼等をそうした犯人はすらすらと続きを話した。
「今年で9歳になりますかね。男の子です」
 石化している一同だったが、それでも頭の中で計算だけは動いてしまう。
 今が9歳。9年といわゆる十月十日、この世界からそれだけの年数を引くと、自分達と同じ年になると綱吉達は答えを出す。
 つまり。
 この場にはいない13歳の京子が子を宿した事になるのだ。

 温かい笑顔がとても魅力的な皆のマドンナ。
 いつどこでアンダーグラウンドの住人と知り合ったのか。
 否、それよりも重要事がある。

 ボゥッと激しい音を立てて、綱吉の額で炎が燃える。
「死ぬ気で骸を消す!」
「お供します十代目!! 消し炭にしてやりましょうッ」
 白蘭と相対する時よりも顔を険しくした主人と右腕が勇ましく吼える。それを止めるのはこの未来世界のディーノと骸の従者であるクロームだった。
「二人共落ち着け!」
「ボス、やめて」
「そうだぞ、ツナ、獄寺」
 落ち着いた声を出すクロームと山本にディーノがわずかに安堵したが、野球少年の顔を見てそれが早計だったと悟る。包帯の巻かれた表情は笑っていなかった。
「この時代の骸をやってもしょうがないだろ。過去で殺らないとな」
 綱吉、獄寺、山本の三人はそれぞれの形で殺意を露わにする。驚きの事実にもショックを受けていないクロームがおろおろと顔を左右に振っていた。
「京子ちゃんって、ボンゴレの薔薇って言われてる美人さん? ウチもずーっと狙ってるのに攫えてないんだよね」
 業火の中で白蘭が軽やかに物騒な事を述べる。つい意識をそちらに取られた少年達は、次の言葉で多大なダメージを受ける羽目になった。
「んー? あの子って23か4ぐらいじゃなかったっけ。14歳くらいで母親? 骸君、やるぅ」
 白蘭がピュウと口笛を吹く。綱吉達もそれぞれ自分で思い至った事ではあったが、他人に口にされると凄まじい衝撃だった。京子の実兄など立ったまま目を開けて気を失っている。
「クフフ。羨ましいですか」
 自分以外の様々な反応をにっこにこ見ていた骸が得意気に笑声をあげ、幻覚をさらに強く練り上げる。
「良い方法があるよ、草食動物。今と過去のその南国果実の両方を殺せば良い」
「待て、恭弥! 今は駄目だ。状況を考えろって!!」
 一番表情が変わらない雲雀が実は最も激しく感情を乱していた。トンファーを構えて走り出そうとする弟子に悲鳴じみた制止をかけるディーノは、頭を巡らせて味方を探す。
「リボーンなんとか言ってくれっ」
 鞭を操って雲雀の突進を防ぎ、頼もしい師を振り返る。赤ん坊の彼は黒帽子を深く引き下げ、溜め息混じりに発言する。
「オレは全力でツナ達を援護したいくらいだが、そうもいかねーな。オイ、お前等、種馬をどうにかする方法は過去に帰ったら教えてやるから我慢しろ」
 お前もかー! と叫ぶディーをすっぱり無視するリボーンの強い言葉に、子供達が唇を噛む。いつまでも骸に構っている暇が無い事はさすがに理解していた。
「絶対だぞ、リボーン!」
「念押しする必要はねぇ。とにかく行くぞ」
「やれるものならやってごらんなさい。僕と京子の愛は容易く断ち切れません」
 歯が浮くような事を言いながら骸の顔は真剣で、業火にプラスして蓮の有幻覚で白蘭を拘束している。ハイパーモードではなくなった綱吉は思わず「ひゃあ!」などと弱気な悲鳴を上げた。







 過去に戻った綱吉達の京子のガードの固さと骸排除行動は、凄まじいの一言に尽きた。
 他にも、雲雀が「あの男にやるぐらいなら僕の子供を産ませる」などという暴走なども起こり、必死に止める周囲の姿もあっという。


 骸と京子がどうなったか、未来だけが知っている。




骸の言う子供がそういう意味じゃないのは百も承知です。
しかし夢(というか妄想)を見てしまうのがオタクというもの!!






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