高校を卒業したその日、花と一緒にピアスを開けた。
 色々なお店にたくさん並ぶ、綺麗で可愛いアクセサリー。ずうっと憧れてた。



93 桃色思考に溺れたい





 雲雀さんは気付いてくれるか、ドキドキしながらお家にお邪魔して。
リビングまで進んだところで腕を引っ張られ、その腕の中に閉じ込められた。
 ピアスをしたばかりの耳に触れられて、かすかに痛みを感じる。突然の事に驚いて、彼の顔が近づいているのに気付くのが遅れてしまった。
「ねえ、なにを勝手に身体に傷つけてるの」
「えっ」
 まだ傷の範囲にあるピアスホールに触れられ、思わず顔を顰めてしまう。彼はとても不機嫌そうな顔になった。
「君の身体は僕のものだよ」
 群れる事が嫌いなのに独占欲の強い彼に言われ、頷く。
 もう随分と前から私は彼のもので、彼は――私のもの、のはずだ。
「あ、あの……似合い、ませんか? ピアスつける子は嫌いですか?」
 そうだとしたらとても悲しい。自分で望んでした事だけれど、好きな人が嫌いだったらやめようかとも考える。
「……そんな事は、ないけどね」
 唸りに近い声が否定してくれる。
 雲雀さんが面白くなさそうなのは気になったが、ほっと安堵した。
 口がへの字のままの彼は、腕を掴んだままだった手を腰に回してきて、ピアスに触れていた手を耳の上の方へ移動させた。
 驚きから回復して、雲雀さんに抱きしめられている現状に頬が熱くなってくる。
「君に傷をつけて良いのは僕だけだよ。たとえ京子自身でも駄目だ」
 鼻の頭をかぷりと食まれ、いよいよ心臓が爆発しそうになる。
 でも納得も降りてきた。
 そうだ。この人は、私の身体にたくさんの歯形を作るような、ひと。
 口癖ならぬ噛み癖。あれはマーキング。声高に私の所有権を主張する。

「もしもピアスを増やしたくなったら、雲雀さんに言います」
「当たり前だよ」
 しれっと頷く彼はとても格好良い男の人だけど、可愛いとも思う。
「今度、京子に似合うピアスを贈ってあげる。
 最初につけるやつはそれじゃなきゃ許さないよ」
 彼の言葉が嬉しくて、笑ってはいと頷いた。




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