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 今日もまた彼女はすすり泣く。


090:硝子の世界



「ここから出して」
「出来ません」
「家に帰して」
「駄目です」
「お願い……」
 そう言って顔を覆って泣く女の前にバジルは跪き、恭しく右足を手に取る。
 脱走出来ぬよう、靴を与えらない素足の指先に口付けた。
「そんな事を仰らないでください」
 逃げようとする足首を捕まえ、うっとりと舌を這わせ、囁く。

ボンゴレの(我等が)女神」

 ――彼女はボンゴレの籠の鳥。
 囲う事を望んだのはボス。認めたのは幹部達。真実を知らぬのはただ一人。

 そうして、魅惑の華は閉じ込められ。
 美しく泣いて濡れる。

「あなたはボンゴレの―――拙者の至宝。
 決して外には出せない」

 まるい膝から、やわらかな内側に軽い音を立てて口付けていく。
 思うままシルシを刻みたいが、そこは堪える。
 痕を残すのはルール違反。
 彼女はバジル一人のものではない。皆のものだ。


「やめて……やめてください」
 京子の声が震えていく。
 バジルの唇が当たるところが膝から段々と上にいけばいくほど、それは酷くなった。
「今宵は拙者の番です、京子殿」
 バジルはそう言って、ワンピースの裾を口で捲る。
 露わになる太腿は、肌を隠していたシルクの布と同じくらい白い。
 細くもやわらかなそこにむしゃぶりついたボンゴレファミリーの門外顧問は、彼女が助けを求めた存在に薄く笑う。
「晴の守護者殿が真実を知ったら、どう思うでしょうね」
 言い終えたところで、頭を振って自分の発言を否定する。
「思うもなにも、知ったが最後、彼はあなたを助けようとするでしょう。しかし、その命はそこで終わりです」
 "彼"という単語に、座っていたベッドに押し倒された京子が嫌々と顔を横に振る。
バジルは彼女の可愛らしい抵抗と否定に目を眇め、その体を本格的に責め始めた。


 閉じ込められた華。
 最愛の兄を人質に取られ、逃げる事も死ぬ事も出来ず。
 ボンゴレの籠の鳥となってから、数多の男から愛される日々。


それでも諦められずに泣いて解放を請う哀れな人を、バジルは抱く。
 歪んだ愛情を以って。


「京子殿……」


 ――男もまた、華に心囚われて籠に閉じ込めた者の一人だった。




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